ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-258
*笠田実(東大院・広域システム), 吉田丈人(東大院・広域システム, 科学技術振興機構さきがけ)
進化生物学の重要な概念である適応進化とは生物の生存や繁殖の向上をもたらすものであり、個体群動態とは切り離せないものである。また、個体群生態学においても、個体群内の遺伝的多様性を考えずに個体群動態の理解を深めるには限界がある。なぜなら、種内の遺伝的多様性がもたらす進化動態が個体群動態全体の振る舞いに影響を与える可能性があるからである。よって、個体群内の遺伝的多様性を考慮した個体群動態を考えることが重要となってくる。
本研究では連続培養装置の一つであるケモスタットを用いて、ワムシと藻類を用いた人工生態系を構築し、進化動態が個体群動態に与える影響を観察した。進化動態の観測は、2タイプの藻類株を使い、それらの株頻度の変化をAsQ-PCR法と呼ばれる方法を用いて測定することで行った。その結果、従来の研究とは異なる個体群動態と進化動態のパタ-ンを新たに観察することに成功した。このパタ-ンは進化を考えた個体群動態のモデルから導かれるパタ-ンと定性的に一致しており、個体群動態と進化動態が相互作用しているということの実験的な証拠の一つを示した。