ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-261
*根本頼子(東北大・院・生命),後藤彰(東北大・院・薬),倉田祥一郎(東北大・院・薬),横山潤(山形大・理),河田雅圭(東北大・院・生命)
生物が多様な病原菌環境に適応しているのは、免疫遺伝子が自然選択を受けた結果である。そのため、免疫遺伝子には病原菌環境への適応の痕跡があるはずであり、免疫遺伝子にはたらく自然選択を検出することで、適応や機能的に重要な領域を特定できる。これまでに、獲得免疫のMHC遺伝子や植物の抵抗性遺伝子(R-gene)は自然界で遺伝的変異が維持されていることが報告され、その一部で平衡選択が検出されている。しかし動物における自然免疫は病原体に対する防御としてより一般的な機構であることが知られているが、自然免疫遺伝子の野生集団での遺伝的変異や多型の存在、多型維持要因は殆ど不明である。しかし近年、野外のキイロショウジョウバエの複数の自然免疫遺伝子で、病原菌抵抗性の違いに関わる多型が発見された(Lazzaro et al. 2004, 2006)。本研究では、発見された多型が野外のキイロショウジョウバエ集団に存在するのか、多型がどのような選択により維持されているのかを調べた。その結果、Lazzaro et al. 2004, 2006より選んだ4遺伝子13多型のうち3遺伝子5多型が検出され、目的の多型以外にも複数の多型が存在した。その後、目的の多型を含む領域についてTajima’s Dの算出、coalescent simulationによる中立遺伝子との比較を行い、ハプロタイプの系統関係を調べた。その結果、抗菌ペプチド産生経路上の病原菌認識遺伝子PGRP-SC1aではselective sweepの途中であることが示唆され、貪食細胞上の病原菌認識遺伝子Sr-CIIと、抗菌ペプチド産生経路上のシグナル伝達遺伝子Tehaoでは平衡選択が検出された。