ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-289
*西嶋 翔太 (東大・農・生物多様性),瀧本 岳 (東邦大・理・生物) 宮下 直 (東大・農・生物多様性)
陸域と水域の両生態系において、2種の侵略的外来種がギルド内捕食の関係をとることがしばしばある。このとき、外来の上位捕食者の駆除が外来の中間捕食者の増加を招き、在来餌生物の減少を引き起こしうることが広く知られている。しかし一方で、上位捕食者の駆除が在来餌の減少を導かない場合も報告されており、どの状況で在来種の減少が起こるのか、体系的な理解は得られていない。これまでは外来上位捕食者、外来中間捕食者、在来餌の3者のみで議論されることがほとんどであったが、中間捕食者は代替餌 (上位捕食者と共有してない餌) の影響を強く受けていることが徐々に示されつつある。そこで本発表では、中間捕食者を支えている代替餌に着目し、上位捕食者の駆除が在来餌の減少を引き起こすための条件を数理モデルにより明らかにし、在来餌個体群の復元戦略を提示する。
在来餌、外来中間捕食者、外来上位捕食者、中間捕食者の代替餌からなるモデルを構築し、解析したところ、上位捕食者の駆除が在来餌の減少を引き起こすかどうかは、(1)中間捕食者と在来餌に対する上位捕食者の捕食率の比、(2)在来餌と代替餌に対する中間捕食者の捕食率の比、(3)中間捕食者に対する代替餌のボトムアップ効果の相対的な強さ、で決まることがわかった。次に、上位捕食者の駆除が在来餌の減少を導く場合において、中間捕食者とその代替餌の駆除の在来餌個体群の回復に対する効果を調べた。ここでは、中間捕食者と代替餌への駆除努力量配分にトレ-ドオフを仮定している。その結果、代替餌の駆除効率が十分に高い場合は、外来中間捕食者に加えて、代替餌の除去も行うことで効果的に在来餌個体群を回復できることがわかった。これらの結果は、ギルド内捕食の関係にある2種の外来種を含む系を復元させるためには、外来中間捕食者の代替餌を考慮することの重要性を示している。