ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-023
*高橋一秋(長野大・環境ツ-リズム),高橋香織(信州大・遺伝子),柳貴洋(長野大・環境ツ-リズム),美齊津裕太(長野大・環境ツ-リズム)
ツキノワグマは樹上の果実を食べるために樹木に登り、枝を折りながら果実を採食する。本研究では、ツキノワグマの枝折りが小規模林冠ギャップの形成に果たす役割を評価するために、林冠ギャップのサイズおよび分布様式を推定した。
軽井沢町長倉山国有林の落葉広葉樹林(約3km2)を、2006年10月-2010年12月に踏査し、小規模林冠ギャップを有する樹木の種類、樹冠部で折られた枝の直径カテゴリ(小:d?1.5cm、中:1.5<d?3cm、大:d>3cm)・傾斜角度、樹冠面積を計測した。折られた枝のサイズは、樹上の枝の直径カテゴリ値と落下した枝の計測値(長さ・幅・厚さ・直径)を用いて推定した。ギャップサイズは、各枝の形状を厚みを持たせたひし形立体に近似させ、それを樹上の枝傾斜角度で傾けたときの垂直方向の面積として算出し、各樹木のギャップ面積を求めた。2009年秋に、調査区(20m×50m)を13個設置し、出現する全ての樹木(DBH>15cm)の位置座標を調査し、Iδ指数を用いて林冠ギャップを有する樹木の分布様式を求めた。
1ha当たりのギャップ面積は平均234.2m2(最大:408.2m2、最小:44.1m2)と推定された。これは1個体の平均樹冠面積(57.0m2)の4.1倍(最大:7.2倍、最小:0.8倍)に相当した。また、樹木1個体当たりのギャップ面積は個体によってばらつきが大きく(平均:5.6m2、最大:30.8m2、最小:0.2m2)、樹種による有意な差は認められなかった。林冠ギャップを有する樹木の分布は、2.5×2.5mの区画面積の単位で一様分布を示し、5×5mと10×10mの区画単位で集中分布を示した。以上の結果から、果実の採食に伴うツキノワグマの枝折りは、林冠層の小規模ギャップの形成に貢献することが示された。
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