ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-024
*藤山直之(北教大・旭川), 上野秀樹(新潟大・教育人間科学), Sih Kahono(インドネシア科学院), 片倉晴雄(北大・院理)
ニジュウヤホシテントウは基本的にナス科植物を食草とするが、東南アジアの幾つかの地域では近年導入されたマメ科のムラサキチョウマメモドキ(以下、マメと略)も利用している。発表者らのこれまでの研究により、インドネシア共和国バリ島にはマメへの適応に関し様々な段階にあるニジュウヤホシテントウ集団が存在することが明らかになっている。本発表では、バリ島においてスズメナスビ(以下、ナスと略)またはマメだけを利用していた2集団(以下、それぞれをナス集団、マメ集団と略)およびそれらの交雑によって得たF1雑種の、実験条件下における幼虫のマメ利用能力および成虫の摂食選好性について報告する。
ナス集団の幼虫に関して、ナス上での羽化率が80%以上であった一方で、マメを摂食した個体は20%以下でありマメ上では大部分が2令に到達できずに死亡した。一方、マメ集団の幼虫はナスとマメの両食草上で約90%の個体が摂食行動を示し、羽化率はナス上で約70%、マメ上では約30%であった。F1雑種の幼虫については、親世代の雌雄の組み合わせに関連した明瞭な差異は認められず、いずれの場合もナス利用能力はほぼ正常に維持された一方で、約90%の個体がマメを摂食し、マメ上での羽化率は約30%であった。成虫の選好性に関しては、ナス集団がナスを極めて強く好んだ一方で、マメ集団はナスとマメの両方を同程度に摂食する傾向がみられた。F1雑種の成虫の摂食選好性はマメ集団と似たものであり、ナスとマメを同程度に摂食した。
以上の結果と先行研究で得られている知見に基づき、ニジュウヤホシテントウのマメ利用能力の遺伝様式を推察するとともに、その伝播過程について考察する。