ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-027
加賀田秀樹(京大・生態研セ)
一般に、広食性の植食者に好んで食べられる植物が生産するリタ-は、分解されやすいことが知られている。そのため、植食者の選択的な摂食は、難分解性のリタ-の割合を相対的に増加させることで、全体としてリタ-の分解速度を低下させることが期待される。しかし、それらは主に植食者としてコオロギやナメクジを使用した研究から導かれたものであり、全ての植食者に対して同様のことがいえるとは限らない。
本研究では、しばしば大発生が報告される広食性の植食性昆虫マイマイガを対象として、マイマイガ幼虫の選択的摂食が分解系に与える影響を明らかにするために、幼虫による食べられやすさとリタ-および幼虫の糞の分解のされやすさとの関係を15種の落葉樹について調べた。
その結果、(1)マイマイガ幼虫は明確な摂食選好性をもっており、また、摂食量と糞の排泄量には強い正の相関があった。(2)リタ-および糞の分解速度は樹種によって有意に異なり、また、糞はリタ-の約2倍の速さで分解された。(3)マイマイガ幼虫が好んで摂食する樹種のリタ-および糞は分解が遅い傾向にあった、などのことがわかった。
これらのことより、マイマイガ幼虫は、リタ-の分解速度がおそい樹種を摂食し、分解されやすい糞として排出する事で、全体として分解速度を増加させる効果をもつことが示唆された。さらに本研究は、植物の食べられやすさと分解されやすさの関係は、対象とした植食者に依存して傾向が異なることも示唆している。