ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-032
*鈴木節子, 吉村研介, 吉丸博志(森林総合研究所)
DNAバ-コ-ディングとは、DNAの特定領域の塩基配列をデ-タベ-ス化し、生物の検索・同定ツ-ルとして用いることを目的とした手法である。DNAバ-コ-ディングには様々な利用可能性があるが、その一つとして野生動物の採食種同定への活用が挙げられる。わずかな試料断片からでもDNAが抽出できれば種識別が可能であるためである。通常、野生動物の採食種同定には、対象動物の行動や食害痕の直接観察、消化管・糞の内容物の観察によって推定されている。しかし、警戒心の強い野生動物の観察は困難であることが多く、食害痕も全ての餌種において残るわけではない。さらに、消化管・糞の内容物は咀嚼や消化で形状が変化しており、餌種の判別は科や目のレベルである場合が多い。以上より、野生動物の採食種同定へのDNAバ-コ-ディングの活用が期待されている。本研究では、植食動物の食性解析を目的として、広範な植物種が含まれる消化管・糞の内容物から抽出したDNAから効率的に増幅するプライマ-開発を行った。利用した領域は、陸上植物の標準的バ-コ-ド領域であり、現時点で最もデ-タが充実しているrbcLとした。DNAデ-タバンク(DDBJ)より、被子・裸子・シダ植物のrbcLの塩基配列を入手、アライメントを行った。プライマ-を設計した部位は比較的変異が少ない場所を選び、プライマ-配列はできるだけ多くの植物種が増幅するよう配慮した。1プライマ-ペアでは被子・裸子・シダ植物全てを増幅できるプライマ-を設計できなかったため、被子・裸子植物とシダ植物のそれぞれに対して各1プライマ-ペア(計2プライマ-ペア)を設計した。今回の発表では、プライマ-配列と各植物種の塩基配列の比較、設計したプライマ-を用いて各植物種を対象に行ったPCRの増幅効率の結果等を報告する。