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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-043

種子散布制限が温帯林の種の共存にもたらす効果

*正木隆(森林総研),中静透(東北大),柴田銃江(森林総研東北),小南陽亮(静岡大),永松大(鳥取大),真鍋徹(北九州自・歴博),星野大介(森林総研東北),星崎和彦(秋田県立大)


▼目的:樹木の種子散布の空間パタ-ンは、散布後の種子・発芽後の実生の死亡率に影響し、結果的に樹木群集の構造や動態を左右するかもしれない。この仮説を検証するため、落葉広葉樹林(小川試験地、カヌマ沢渓畔林試験地)と常緑広葉樹林(綾試験地)の種子散布デ-タ(100個以上のトラップで12年間)と実生の生残デ-タ(種子トラップとペアになっているコドラ-ト)を解析し、シミュレ-ションをおこなった。綾試験地は周食型散布種子の樹種、小川試験地は重力散布型種子の樹種、カヌマ沢渓畔林試験地は風散布型種子の樹種というように、それぞれ群集レベルで優占する種子散布のパタ-ンに特徴がある。▼方法:実生の出現密度が種子散布密度に比例し、その比例定数は距離や光条件などを線形結合した値の逆ロジット変換である、とした統計モデルを構築し、階層ベイズ法で種ごとにパラメ-タを推定した。出現実生の1年間の生存率も、同様にモデル化した。そして、これらの統計モデルでシミュレ-ションをおこなった。シミュレ-ションで調べたいのは種子散布パタ-ンの影響なので、観測された種子分布、ポアソン分布、負の二項分布の3通りを想定して種子散布パタ-ンを出現させた。パラメ-タは事後分布にしたがってランダムに発生させた。▼結果:異なる種子散布パタ-ンが生存実生の種間分布相関に及ぼす影響を評価した結果、どの試験地においても、種子がポアソン分布するときに、種間の重なりが最大となり、種の共存に不利な状況となることが示された。よって樹木の種子は均一に広く散布されるよりは、より空間的に不均質に散布される方が、樹種の共存は促進されるものと考えられた。


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