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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-276

微量元素分析を用いたオオクチバスの生息地推定

*井上博元(弘前大・農),野田香織(弘前大・理工),渡邉泉(農工大・農),東信行(弘前大・農)


青森県津軽半島には多くの溜池と農業用水路があり、そこに様々な魚類が生態系を形成している。農業用水路は網目のように広がる複雑な水系ネットワ-クである。近年、青森県においても、多くの溜池にオオクチバスが移入された。オオクチバスは幅広い食性をもち、特に魚食性が強いため移入された水系の他魚類に対して強い影響を与える影響が、溜池の構造などによってその度合いが異なるため、魚類を中心とした食物網・物質循環にも違いが出てくることが考えられる。一方、溜池は季節管理によって池から水路への放水が行われ、その放水と共に溜池の生物が水路へ放たれるということが起こる。水路にはヤリタナゴや希少種も生息しており、水路においても影響をあたえることが懸念される。水路におけるオオクチバスのソ-スは溜池であることが多く,その由来を判定できれば総合的な対策が可能になる。

今回は規模が近い三つの溜池のオオクチバスで、微量元素分析と炭素・窒素安定同位体比分析を行った。オオクチバスと在来種が同時に存在しているオオクチバスの影響が相対的に小さかったと考えられる溜池(狄ヶ館溜池)、オオクチバスのみになってしまったオオクチバスの影響が強く現れた溜池(舘岡大溜池)、2009年までは多数のワカサギなどの他魚種が採捕されていたが2010年では他魚種が激減してしまった溜池(平滝沼)、とそれぞれ魚種組成が異なっている。また、舘岡大溜池と平滝沼は水路で繋がっており、平滝沼から舘岡大溜池へ水が流入する。分析の結果、安定同位体比、Sr濃度とCa濃度、Rb濃度とCs濃度という元素の組み合わせで判別が可能だった。また、安定同位体比だけでは判別ができない個体であっても、Sr濃度とCa濃度を使い判別が可能だった。このことから、微量元素分析と炭素・窒素安定同位体比分析からオオクチバスの生息地推定が可能であると示唆された。


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