ESJ58 企画集会 T04-1
*本田剛(山梨県総合農業技術センタ-)
獣害対策技術は数多く提案されているものの、その技術を利用することで得られる効果を正確に予測できることは少ない。これは、利用される技術が十分なデ-タの上に成り立っていないからである。例えば獣害が何故発生するのか、増加している理由は何かという農林業者の素朴な疑問にさえ、研究者は "科学的根拠をもって" 答えることができない。このような問いに対して、多くの専門家は仮説をあたかも定説であるかのごとく「拡大造林の影響」「過疎・高齢化」「耕作放棄地の増加」等を指摘し、回答とする。しかしこれら仮説は検証されない限り素人の思いつきの域を出ず、また仮説に基づいた対策に至っては獣害を減らすのか、逆に増加させてしまうのかさえ断定することができない。このような状況を打破するため、山梨県では被害デ-タと植生・人間活動の関係を簡便な統計モデリングにより推定し、仮説を検証するための第一歩を踏み出した。この企画集会ではその一部を紹介する。調査地が山梨県に限定されるため、紹介する内容だけでは仮説検証としては不完全な面が残り、また統計モデリングのみで因果推論を行うことには限界がある。しかしこのような検証作業を積み上げることこそが獣害対策の基礎を築くはずである。