ESJ58 企画集会 T13-4
伊谷 行(高知大・教)
四万十川は高知県西部を流れる「日本最後の清流」として名高い河川である。流域に大規模なダムがないことがその理由のひとつであるが、現在、その河口域に大規模な河川改修工事が計画されており、今後も「日本最後の清流」であり続けることができるのかが危惧される。現在、顕在化している問題は、四万十川河口砂州の消失問題である。この砂州は、四万十川を太平洋の波浪から守る働きをしており、河口近くで合流する支流の竹島川も含めて、河口域にはスジアオノリの漁場、コアマモの藻場、シオマネキやクシテガニが生息する泥干潟が点在し、巨大なアカメが息づく独特の生態系をつくりあげていた。砂州は大雨や台風により、これまでも消失することがあったが、すぐに自然に復元されてきた。しかし、2005年秋に消失した際には復元されず、1年半後に土砂投入により復元された。さらに、2009年秋に消失してからは、現在まで復元されていない。この間、塩分変化や波浪の影響などにより、スジアオノリの漁獲は下がり、コアマモ藻場のいくつかは消失した。河口砂州の消失原因について、国土交通省と高知県は、河口付近に建設中の「第1防波堤」が主因であることを2010年10月に認めることとなった。しかし、その対応策は基本的には土砂の投入であり、根本的な「第1防波堤」の撤去ではない。本報告では、「第1防波堤」の建設目的である河川改修問題について紹介し、今後の学会の対応について検討を行う。また、土佐湾における細砂底の生態系の危機についてもあわせて紹介を行う。