ESJ58 企画集会 T16-3
池田透(北海道大学)
外来生物法では、現在までに21種類の哺乳類が特定外来生物の指定を受けているが、現時点で主務大臣以外の者が特定外来生物の防除を行う場合の防除の確認・認定をうけているものは、アライグマ・カニクイアライグマ・アメリカミンク・ヌ-トリア・クリハラリス・アカゲザル・キョン・マスクラットの8種類であり、導入された全ての哺乳類に防除が実施されてはおらず、侵入地域も網羅されているわけではない。また、実際の外来哺乳類対策では、外来生物法による防除の確認・認定の他に、有害鳥獣捕獲による対策も可能となっており、農業被害等が顕著なアライグマなどでは、未だに有害鳥獣捕獲によって対策が実施されている地域が多い。
有害鳥獣捕獲は、農業等被害に対する対症療法に過ぎず、速やかに外来生物法に基づく防除の確認・認定による科学的対策に移行することが望まれるが、市町村等では防除の確認・認定を敬遠する傾向が強い。その理由としては、防除計画を立てて確認・認定を受けることのメリットが明確に理解されていないこと、また、国・都道府県・市町村及びNPO等の役割分担が明確ではなく、対策が地域に丸投げされている感をぬぐえないところにある。また、防除の確認・認定を受けている場合でも、地域で個別に対策が進められており、地域間の連携が望まれる。
さらに、対策の実施においては行政と地域関係者との協働が重要であり、実際に地域的根絶が達成された小笠原のヤギや、根絶まであと一歩という和歌山タイワンザルの事例においても、行政と地域関係者における協働が対策進展に大きく寄与していることから、組織間の連携も必要と考える。
今後外来哺乳類対策を効果的に実施するためには、国・都道府県・市町村等の役割分担を明確にした上で、地域住民や関係者との協働を進め、各々が機能的に協働できる科学的総合防除体制の構築が急務と考える。