ESJ58 企画集会 T16-4
戸田光彦(自然環境研究センタ-)
爬虫類及び両生類(とりわけ小型の種)は食料等としての有用性も産業被害もほとんどなく、多くの種が人にとって無害無益の生物として認識されてきた。そのため、狩猟・漁労・農業害虫駆除といった「対象動物を効率的に捕獲・駆除するための試行錯誤の歴史」が他の分類群に比してはるかに短く、捕獲手法が十分に開発されていない。
現在、日本で定着が報告されている特定外来生物の爬虫類は4種、同じく両生類は3種であり、これらを中心に各地で防除が実施されている。防除事例は八重山諸島、小笠原諸島といった島嶼部で多く、本土ではウシガエルとアカミミガメを対象としたものが多い。多くの防除事例では生態系被害の軽減を目的としており、関連して、防除効果(=生態系の回復状況)の測定手法が十分に確立しているとは言い難い。
演者が関わってきた外来爬虫類・両生類(グリ-ンアノ-ル、オオヒキガエル、ウシガエル等)の防除の経験から、島嶼などの狭い地域では、地域根絶を含めた効果的な防除を実現することが可能である。ただし、単位面積からの完全排除に必要な労力が哺乳類や樹木のそれに比べてはるかに大きいと言える。今後の外来爬虫類・両生類の防除においては、次のような点が課題となるであろう。
?対象種、地域特性及び防除目標に応じた適切かつ現実的な計画を立案すること(目標を定めずにひたすら捕獲している事例もある)。
?計画達成にふさわしい手法を開発・採用すべきこと(目標に比してきわめて小さい捕獲努力量しか費やされていない事例もある)。
?防除作業と並んでモニタリング(防除の効果測定)を実施し、次期の防除に活用すること。
外来爬虫類・両生類を対象とした防除においては、単位面積あたり労力が多大で広域での展開が困難な事例が多いと推測される。新たな防除を展開するためには、これまでに試されてこなかった新たな捕獲・遮断等の技術を編み出すことが求められている。