ESJ58 企画集会 T16-6
伊藤健二(農業環境技術研究所)
特定外来生物に指定されている淡水二枚貝類は「カワヒバリガイ属の全種」「カワホトトギスガイ(ゼブラガイ)、クワッガガイ」であり、そのうち国内で定着が確認されているものは中国・東アジア原産のカワヒバリガイである。カワヒバリガイは1990年代初頭に木曽川水系下流部と琵琶湖・淀川水系への侵入・定着が確認され、現在では東海・関東地域を含む広い範囲で生息が確認されている。本種は日本国内に少なくとも二回、独立した侵入が生じ、その侵入経路は原産地からの輸入水産物(シジミなど)への随伴と推察されている。近年新たな地域での発生や被害の報告が相次いでおり、一部地域では対策に苦慮している。現在行われているカワヒバリガイへの対策は、被害が発生した施設での貝の駆除や付着対策を中心とする被害防止(軽減)の取り組みであるが、より根本的な対策である侵入・拡大防止を目的とした対策はほとんど行われていない。例えば,輸入シジミへの混入は既に1987年に報告されていたが、その後の対策や実態調査は行われていない。また,水産物や種苗の流通などを経由した国内移動についても、その可能性は指摘されるものの実情は明らかではない。近年明らかになった導水路等の利水施設を経由する河川間の分布拡大についても、ほとんど顧みられていないのが実情である。人為的な営みと関係するカワヒバリガイの侵入・拡大のプロセスは、ほとんどが「非意図的」であり、これらの行動を規制するうえで外来生物法は十分役に立っているとは言い難い。これらの問題を解決するうえで外来生物法が有効に機能するためには、なんらかのかたちで「非意図的」な営みを規制できるような修正・運用が必要だと考えられる。