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ESJ58 企画集会 T23-1

里の爬虫両生類の受難の時代:整備と放棄と農法と

大澤啓志(日大・生物資源科学部)


普通種とされる里の両生類・爬虫類は、その生息実態が必ずしも十分には把握されておらず、?実際に減少しているか、?減少しているとしたら何が要因なのか、?複合的な影響をどう科学的に追求できるのか、等の問いが今なお横たわっている。圃場整備による乾田化が早春期繁殖型の両生類に負の影響を与えること、あるいは丘陵地のゴルフ場開発等が両生爬虫類の生息地を減少させていることが指摘されたのが1990年代初頭である。その後、圃場整備による水路のコンクリ-ト化による水田と樹林の行き来の移動障害のみならず、生活空間そのものであった多様な環境を持つ土水路・畦畔の消失が指摘される。また、河川やため池等の護岸整備も水辺と周辺緑地を行き来するカメ類への負の影響が指摘される。所謂、我が国の生物多様性を脅かす第一の危機である。カエル類の減少が高次の捕食動物の密度低下を招くことも示唆されるが、実証的な証拠は未だ不十分である。一方、耕作放棄により水田等の植生遷移が進み、両生類の繁殖が減少・停止することも1970年代後半に指摘された。すなわち、第二の危機である。今日では、日本各地の条件不利地での耕作放棄が社会問題化しており、人の手が入ることで維持されてきた農村の陽光の水辺や草地(半自然草地)の消失は、日光浴を必要とする外温性の爬虫類の生息域を狭める可能性が想定される。第一と第二の危機の中間くらいに位置付くのが、農法の変化である。作付け品種に合わせて水田の湛水時期や期間が変わり、これにより一部の両生類の生活史と栽培暦が対応しなくなり、生息できなくなることが指摘される。また、二毛作(麦等の裏作)に伴う地域全域での非通水期間の設定、減反政策に対応した水稲-大豆-麦の輪作等、水田や利水施設の構造と言ったハ-ド面のみならず、農法の様態と里に普通にいた両生類・爬虫類の生息との関係も看過できない。


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