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ESJ58 企画集会 T23-2

水田に依存した水生昆虫普通種の激減の主因-苗箱施用殺虫剤の影響評価

日鷹一雅(愛媛大・農)・本林 隆(農工大・農)


従来は、ひと昔前に普通種だった種個体群が著しく衰退し、RDBに掲載されてきたことが問題になり、水田に生息する種ではタガメやゲンゴロウを代表格に多くの動植物種の絶滅が心配されてきた。このひと昔前のわが国の水田普通種の激減は、この半世紀にわたる農業構造の近代化のための様々な生息環境の悪化によるものであると理解されている。その反省から、環境配慮・保全を志向した水田環境管理が各地で進められているが、果たして水田生物多様性の衰退に歯止めがかかっているのだろうか? ごく最近、水田昆虫のシンボル種、アカトンボ類の減少が各地で報告されるようになり、アキアカネの減少に関してはある特定の苗箱処理殺虫剤の幼虫に対する悪影響がメソコズム実験によって示された(神宮寺ら 2009)。水稲栽培を省力化する必要性から考案されたのが、苗箱による育苗期に長期残効、微量でよく効く殺虫剤施用による害虫防除技術である。この苗箱処理防除は日本各地で1990年代に普及し、現在の高齢化、耕作者激減の農村では基幹となる水田農業技術になっており、10種類程度の殺虫剤が使われてきた。ここでは、全国に広く分布する中型のゲンゴロウ・ガムシ類の代表種に対する数種の箱処理剤の影響評価を水田マイクロコズムと感受性検定実験によって検討した。その結果、成虫に対しても高い毒性を示す薬剤があること。また、種と薬剤の組合せによって影響のあらわれ方が異なることが示唆された。ヒメゲンゴロウおよびヒメガムシの成虫についてフィプロニルに対するLC50値を求めた結果、両種の間には100倍程度以上の感受性の違いがみられた。このような薬剤成分に対する各種成虫の感受性の違いを把握することは、水田の普通種である昆虫の多様性に対する各種箱処理剤の影響評価を検討する上で今後重要な意義をもつものと考えられる。外来種など他の諸要因にも言及した総合的が議論も忘れてはならないだろう。


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