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ESJ58 企画集会 T24-4

銭函海岸の風力発電問題〜海岸植生の視点から

松島 肇(北大・院・農)


北海道の海岸は砂浜が多く残されていることが特徴であるが、さらに重要なことは、砂浜が後背地の海岸砂丘や海岸林との連続性を自然状態のまま保持した空間的多様性を有する、本来の砂浜海岸の姿を保持している点である。特に、石狩海岸は近隣に190万都市である札幌市を近隣に有し、周辺の石狩市や小樽市を含めると220万人規模の周辺人口を抱える海岸であるにも関わらず、このように本来的砂浜海岸の形態を留めている点で全国的に見ても例がなく、きわめて希少な自然海岸であると言える。特に日本のように温暖で雨量の多く自然草原が成立しにくい環境下では、海岸砂丘上に発達する海岸草原は高山帯の草原と同じように希少な自然草原として評価されている。しかし、日本において海岸草原に対する認識は低く、長い間、開発等による影響にさらされ多くの海岸草原が失われてきた。そのような中、石狩海岸の小樽市域「銭函海岸」では風力発電施設の建設計画が話題を呼んでいる。温暖化が問題視され、新たなエネルギ-への転換が求められる昨今、風力発電は太陽光発電とならんでクリ-ンエネルギ-の代表であり、世論の期待は大きいが、一方で石狩海岸の自然環境も「絶滅危惧」といっていいほど希少な環境である。非常に微妙なバランスの上に成立している海岸砂丘上に人工構造物を設置すると、風の流れが変化し構造物周辺で砂の移動が頻繁に起こるようになる場合や、あるいは静砂垣等で砂の移動を抑制すると今度は内陸性の草本が侵入してきて海岸植生の種組成が変化してしまうこともある。開発と保護、そのどちらを優先すべきかを判断することは容易な問題ではないが、我々が享受している恩恵を次世代に残し引き継ぐこともまた、我々の責任である。安易に関係者だけで結論づけるのではなく、広く意見を聞いた上で議論を重ね、慎重に結論を出すことが必要であろう。


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