前回の更新から一ヶ月が経過してしまいました。年度末の喧騒と海外出張が重なり、あわただしく過ごしているうちに、いたずらに日を重ねてしまいました。この間、2月6日に今期第一回の常任委員会を開催し、法人化対応などの諸課題について議論しました。そこでの議論もふまえて、今日は3つのテーマについて書くことにします。
法人化に関しては、「定款案」をウェブ上で公表し、会員からの意見募集を開始しました。また、「法人化にむけて」という解説文書を準備しました。次号の日本生態学会誌に掲載されますが、これに先立ち、「定款案」と一緒にウェブ上でも公開しています。「定款案」を検討するうえで、参考にしてください。
その後、内閣府公益認定等委員会第28回委員会において「公益目的事業のチェックポイントについて」が提案・了承され、事態は急展開を迎えています。公表された「公益目的事業のチェックポイント」では、学会大会も学術雑誌の発行も、いずれも事業区分にあげられていません。この事業区分が機会的に適用されると、多くの学会は「全事業のうち公益目的事業が50%以上を占める」という基準を満たすことができなくなります。もしこの基準を満たさないと判定され、「一般社団法人」となると、全事業に対して企業なみの法人税が課税される見通しです。すでに日本学術会議や生物科学学会連合でも対応を検討しているようですが、日本生態学会としても内閣府公益認定等委員会に対する要望書を提出するほうが良いと判断し、現在その案を常任委員会で協議中です。今後、生物科学学会連合や日本学術会議とも連絡をとりながら、学術団体の公益的活動が課税対象となることがないよう、要望していく予定です。
2月6日の常任委員会では、データベースの報告をEcological Researchに掲載する新しい枠組みについて議論しました。この案は、菊澤前会長のときから検討されているものです。大規模長期生態学専門委員長の日浦さんに、JaLTER(日本長期生態学研究ネットワーク)の近況とあわせて、下記のニュースを寄せていただきました。
『JaLTERは一昨年暮れに正式発足し、昨年夏にILTERにも正式参加 が認められました。大規模長期生態学専門委員会ではこのJaLTERの情報委員会と連携して、Ecological Researchにデータぺーバー枠を作れないかと検討しようとしています。
個人や研究室でこれまでとられてきた、あるいはこれからとられる膨大なデータを埋もれさせず、後世に残して誰でも利用できるような形にするためには公開を前提としたデータベースの構築が欠かせません。
ERにデータペーパー枠を作ることでデータを公開することも個人や研究機関の業績となり、またデータベースのクオリティーコントロールの面でも利点があると思います。JaLTER情報委員会ではすでにデータベースの枠組みを完成させつつあり、サーバーも当面は国環研に置くことが決まっています。
審査体制など今後いくつかの点をクリアしていかねばなりませんが、積極的に推進していきたいと考えています。』
この課題については、Ecological Research編集委員会とよく協議したうえで、できるだけ早く実現したいと考えています。
民主党が「生物多様性基本法」を議員立法で提案することを計画し、その法案をウェブで公開して、パブリックコメントの募集を行ないました。そこで、自然保護専門委員会で「民主党・生物多様性基本法案(仮称)に対する意見」という文書を用意していただいて、2月15日に「日本生態学会自然保護専門委員会委員長」名で提出しました。
この意見提出にあたっては、特定政党を支持しているという誤解を与えないように注意を払いました。自然保護専門委員会から提出した文書ですが、常任委員会メンバーにも案を送ってチェックしていただきました。
わが国は、「生物多様性国家戦略」を策定していますが、この戦略に法的根拠はありません。法的には、環境基本法において「人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全」に関する施策を総合的かつ計画的に推進するという目的が設定されており、「生物多様性国家戦略」はこの目的に沿って策定されたものと言えます。「生物多様性基本法」という法律が策定されれば、生物多様性保全の行政をより強力に推進する根拠となると考えられます。この判断にもとづき、法案の内容が生態学の立場から見てより正確なものになるよう、意見を出しました。
今回は、メッセージというよりも報告が中心になりました。
2月11日〜14日にアブダビで開催されたIUCN-SSCの会議は大変興味深いものでしたが、この件に関しては、いずれ日をあらためて書きたいと思います。