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企画集会 T19
広葉樹の年輪をみると,成長期の初期に年輪界に沿って大きな道管を形成する環孔材と,年輪内で径が比較的そろった道管を形成する散孔材がある.この木材解剖学的な観点にたった区分からは両者の生態的な違いは見えてこないが,道管の水輸送効率や木部の通導面積の違い,道管形成時期の違いなどを比較すると,両者の生理生態的な違いが明らかになってくる.環孔材樹種は散孔材樹種に比べて材の水輸送効率が高い一方で,一般に木部形成の開始時期が遅い.木部の水輸送効率は葉での水利用に直結し,光合成の効率に影響を及ぼすので,こうした違いは落葉広葉樹林において両者が共存しうる理由と関係しているかもしれないし,環孔材樹種の分布が冷温帯の落葉広葉樹林に集中している理由を示すのかもしれない.実際に,常緑の環孔材樹種は存在せず,温帯と同様に生育不適期間が存在する熱帯季節林には環孔材樹種がほとんど出現しない.したがって,環孔材樹種は温帯落葉広葉樹林の環境にもっとも適応していると言える.
この集会では,水利用の観点から環孔材と散孔材の構造と機能をとらえ直し,両樹種の木部構造にどのような機能的,適応的意味があるかを考える.
当企画集会URL
http://www.geocities.jp/web_seino/research/esj55/ecoanatomy3.html
[T19-1] 趣旨説明:環孔材の機能的定義に関する話題
[T19-2] 散孔材と環孔材におけるHuber valueの違いとその意味
[T19-3] 高CO2濃度環境下で生育させた落葉広葉樹の解剖特性
[T19-4] 落葉広葉樹における通水性と葉のフェノロジーの関係
[T19-5] 熱帯と温帯のブナ科樹種の解剖特性の比較と生態的意義