| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T03-2

奄美の固有生物の現状と外来種対策の国際ネットワーク構築

山田文雄(森林総研・関西)

奄美群島の中で,奄美大島(面積712平方km)は最大の島で,森林率(70%)や標高(645m)が最も高く,大陸島として独自の進化過程の中で固有生物を育んできた.たとえば,哺乳類ではアマミノクロウサギやアマミトゲネズミ,鳥類ではオオトラツグミ,ルリカケス,アマミヤマシギ,両生爬虫類ではイシカワガエルなどがあげられる.近年これらの固有生物は,外来種の影響を受け減少を続けている.

外来種の中で,特に1980年ごろに人為的に導入されたジャワマングースは個体数を増やし,さまざまな固有生物に悪影響を与えてきた.このために,マングース根絶プロジェクトが10年計画で2005年度から開始され,事業4年目には個体数の大幅削減を達成している.今後は,低密度個体の効率的捕獲と地域的根絶確認の第二段階目に入るが,この事業の評価を行い,また先進事例として,世界各国の外来哺乳類対策に関する知識と経験を集約し,有効な具体的対策を整理し,国際的ネットワークを構築する必要があると考えられた.

このため,2008年11月に沖縄で「国際シンポジウム侵略的外来哺乳類の防除戦略 (CSIAM 2008)」を開催し,わが国のマングース根絶プロジェクトの評価を行なうとともに,「失敗から学び成功を築く,外来哺乳類に勝つための100の方法」を抽出する作業を行った.マングース根絶プロジェクトでは,根絶事業の第一段階はほぼ成功と評価されたが,より詳細な戦略的計画と作戦計画策定が求められた.「100の方法」からはさまざまな有効な対策や課題が抽出された.今後,琉球諸島が世界自然遺産指定されるためには,外来種対策への取り組みが重要なポイントとなるが,今回整理された有効な対策の導入や,構築された国際ネットワークによって,外来種対策が成功に導けるよう期待される.


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