| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T04-3
群集生態学は,生物群集におけるパターンとそれが生みだされる機構の解明を目指す学問分野である.なかでも,「群集構造」,「個体群動態」,「種間相互作用」は生物群集の特に重要なパターンである.これまでの群集生態学では,生物の環境変化に対する可塑的な反応や迅速な進化などが生物群集に果たす役割については,十分に取り上げられてこなかった.生物は,他種との相互作用や環境の変化に対応して,可塑的な反応や迅速な進化により,表現型をさまざまに変化させる.この短い時間スケールの「適応」は,種間相互作用やそれが生みだす個体群動態など,群集生態学のさまざまな現象に深く関わっている.
一方,長い時間スケールで生じる大進化も,本質的には形質変化をもたらす小進化の積み重ねにほかならない.小進化による形質の変化が長期にわたって繰り返されることにより,新しい種が形づくられ,やがて悠久の時間の後に多種多様な生物が生み出される.この大進化によって創出された生物多様性が,現在の生物群集を形づくる基盤になっている.このように,生物群集はさまざまな時間スケールでみられる「適応」の結果であると同時に,適応を引き起こす原因にもなっている.
本講演では,これらの「生物群集に対する適応の影響」と「適応に対する生物群集の影響」について概観し,今後の研究が目指すべき課題を議論したい.