| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T06-5

スミレ属2種における分子系統地理と形質進化のプロセス

遠山 弘法(九大・理)

植物の地理的分布や集団間の形質の違いは、現在と過去、両方の生態的要因によって生じる。分子系統地理は、多くの植物種の遺伝的な集団分化の歴史を明らかにしてきた。本研究では、日本における林床性の種と草原性の種の集団分化の歴史、および形質進化における自然選択と遺伝的浮動の相対的な重要性を明らかにするために、林床性のエイザンスミレと草原性のヒゴスミレの姉妹種を用いた。

それぞれの種は分布域全体をカバーするように11集団ずつサンプリングを行った。集団間の系統地理的な関係を推定するために、5つのAFLPプライマーセットを用いた。系統解析の結果、エイザンスミレは主に2つのクレードに、ヒゴスミレは明確なクレードにわかれなかった。この結果は、異なる生態的な要求性が異なる地理的分化パターンを生じさせたことを示唆する。

次に形質進化のプロセスを明らかにするために、共通環境下で生育させた個体の15形質を測定し、FSTとQSTの比較解析、系統樹を基にした解析を行った。両解析とも中立進化に対し、実際の集団分化が大きいのか、小さいのか、同程度なのかを見ることで、形質進化に対する自然選択と遺伝的浮動の相対的な重要性を明らかにする事が出来る。両解析の結果、春葉重/面積、夏場面積、開放化への投資割合、閉鎖花への投資量、投資割合に対し、均一化選択が働いていた。この結果は、林床、草原といった制限されたニッチ要求性が、表現型に対する均一化選択となっている事を示唆する。


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