| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T08-1
玉石河原と清流の日本河川の姿は今や大きく変わり、河川敷は樹木群に覆われ、外来植物のアレチウリやクズ、ヤブガラシのツル植物の大繁茂も手伝い、堤防上に立っても川面が見えない河川が多くなっている。かつて水害防備林の役目を果たしていた竹林(マダケ)も、流水阻害物でしかない(滋賀県愛知川、佐賀県嘉瀬川)。2007年9月の台風9号で倒木した大径木の年輪を見ると(東京多摩川)、そのほとんどは30年未満のもので、近年急速に樹林化が進行していることが分かる。樹木の成長特性では、外来性のシダレヤナギの成長量がとくに大きい。面積拡大率で見るとハチクでは約10年で2倍増、シンジュでは約5年で4倍増に達する(東京多摩川)。薮化と樹林化は堤防上にも迫っており、河川管理上の重要な課題になりつつある。河道内に侵入する樹種については、ハリエンジュに限らず、オニグルミ、シンジュ、キササゲ、ヤマグワ、マダケなどの他、在来種のヤナギ類をはじめエノキ、ケヤキ、ネムノキなど多種にわたり、河川敷内でも盛んに種子繁殖している。樹林化は遠目では豊かな緑であるが、疎林的で林床にクズやメダケ類の繁茂をもたらし、種多様性の低下、景観の悪化につながっている(東京多摩川)。各地で行われているハリエンジュ対策も、根本的対策につながっておらず、効果的な解決の方策は見つかっていない(福島県阿賀川、山形県赤川、群馬県神流川)。河川敷の植生繁茂は、洪水時流木の発生に加え、大量の草本植物の流出を招き、流水阻害や河川施設の機能阻害要因となっており、ひいては海域にまで流出している。