| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T08-4

河道内樹木の洪水時破壊条件

八木澤順治(埼玉大大学院)

近年,治水的・環境的な観点から河道内樹林化が問題視されている.河川における自然再生事業や治水安全度確保のため,河道内の植物の管理が実施されている.それを効率的に行なうため,任意地点に適用可能な樹林化判定手法の確立が求められている.樹林化判定手法の確立に必要な基礎的な知見として,洪水時における樹木の破壊条件を把握することが必要である.そこで,荒川中流域の砂礫州上に繁茂した樹木(タチヤナギ・ハリエンジュ)に着目し,洪水前後の繁茂状況から得られる樹木の破壊実績と数値計算によって得られるパラメータ(抗力モーメント・底面せん断力)との比較に基づき,洪水時における樹木の破壊条件を把握した.さらに,対象とした砂礫州の状況下において,(1)生育基盤(河床材料の粒度分布形状),(2)繁茂位置(側方侵食を伴う場所に繁茂した樹木と砂礫州上の平坦な場所に繁茂した樹木),の違いが破壊条件に与える影響について検討した.その結果,(1)に対しては,対象砂礫州のように50%粒径(d50)と84%粒径(d84)の比(d84/d50)が1よりはるかに大きい場合,河床低下に支配的な粒径がd84を含めた大粒径であることより,植物の流失はd84の移動限界によって評価可能であることが分かった.一方,(2)に対しては,砂礫州端部に繁茂した樹木は側方侵食によって根のせん断抵抗が減少するため,平坦部に繁茂した樹木に比べ0.6〜0.7倍の流失限界値であることが分かった.以上のことより,洪水による樹木の破壊を評価する際には生育基盤や繁茂位置の違いを考慮する必要性が示唆された.


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