| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T09-2

砂堆生態系の現状と保全

大森浩二(愛媛大・理)

愛媛県斎灘の砂堆生態系におけるこれまでの研究から、表層植物プランクトン及び底生微細藻類によるによる一次生産の相方が重要であることが明らかとなった。

表層植物プランクトンによる一次生産過程

砂堆周辺の浅海域では、小潮時には特に、海水流動性(=拡散力)の低下により、低潮時におけるクロロフィルa濃度が比較的高くなる傾向がみられる。この基本的な潮汐周期に基づく海水流動性の変化に伴うクロロフィルa濃度の周期的変化の上に、晴天が2‐3日継続する日照条件が整うと、大潮周期に関係なく、高クロロフィルa濃度のパッチが形成されるようになる。更に、夏期のN制限環境下で砂堆堆積物表層から水柱への間欠的な栄養塩類の供給があることがこれらの一次生産過程を支えていると考えられる。

底生微細藻類による一次生産過程

北条周辺の砂堆を含む水深10-20m以浅の沿岸海域海底表層堆積物中において、高いクロロフィルa濃度が観測された。底生微細藻類の高い生物量を示している。また、これら浅海域の海底において相対照度1%以上を観測した。海底表層での一次生産活動の可能性を示している。また、小潮のような流速が遅い環境では、光・栄養塩条件が良好な浅場である砂堆底部で底生性一次生産者が活発な一次生産を行うこと、それが潮汐周期にともなう流速の増大によって底生性一次生産者が撒きあがり、且つ表層部への栄養塩供給によって水柱での一次生産速度を高めていることが推測された。

この砂碓周辺で採集された多様な生物は、その多くが上記した一次生産の2つの資源の相方を利用していることが安定同位対比分析で明らかになった。


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