| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T11-1
植物−植物間のポジティブな相互関係、つまりFacilitationは劣化した乾燥地における回復のプロセスを促進する手法として注目されており、しばしば砂漠化をコントロールするための植林技術に応用されている。潅木はその周辺に細かい土壌粒型、土壌湿度、種子密度を増加し、土壌の有機物や窒素割合を高め、土壌のpHを下げる。これらの土壌環境の回復は、種が多様で、密度、草丈、被度やバイオマスの高い植生を形成することが知られている。
東アジアの乾燥地では個々の潅木が砂を吸着し、土壌マウンドを形成している。このマウンドは成長に応じて土壌表面の粗度を増加させ、その結果風速、砂の移動速度や土壌温度を下げる働きがあることが報告されている。このような環境変化は個々の潅木よりも大きな空間スケールの植生回復をもたらすと考えられる。ところが、これまで潅木によるfacilitationは個々の潅木とその周辺のように小さな空間スケールで評価した研究に集中し、広域スケールで評価したものはなかった。以上から、本研究は広域スケールを含めマルチスケールで潅木のfacilitation機能を評価した。
まず、モンゴルのマンダルゴビ周辺の衛星画像を用いて、マメ科低木(Caragana spp.)の分布密度を把握した。その密度を基に、低木なし、低木低密度、低木高密度の調査プロット (50 m × 50 m) をそれぞれ5つ設定した。次に、3つの空間スケール(5 m × 5 m, 20 m × 20 m, 50 m × 50 m) でプロット内の植生調査を行った。また、プロット内の土壌マウンド上とマウンド外でそれぞれ土壌の理化学性を分析した。
その結果、潅木によるfacilitationは空間スケール依存であり、より広域スケールでその機能が高まっていた。