| 要旨トップ | ESJ56 企画集会 一覧 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T12 -- 3月19日17:30-19:30 A会場
日本最大の湿地環境である水田において、里地の生物多様性の再生への貢献が期待され、つい最近ラムサール条約会議で水田決議が承認されたのは記憶に新しい。しかし、水田は我が国の基幹的な食糧自給生産の場であり続けてきたため、農業生産向上のために乾田化や合成化学物質の濫用など、多様な生物種の生息環境に対し負の影響を与えてきた側面も大きい。1990年代から、乾田化された水田において、非湛水期間の活用で生産プロセスと自然環境保全を時間的に切り離すことによって、営農と生物多様性保全の両立をねらった「冬期湛水」の試みが数多く報告されるようになった。最近では、有機農業と結びついて環境保全型栽培技術の一つとして捉えられ、農林水産省の生物多様性国家戦略の中で、代替技術の基幹であるかのに様に取り上げらている。しかし、生物多様性に及ぼす冬期湛水の効果の科学的検証については、まだ始まったばかりであり、「冬期湛水」への冷静な評価は重要であろう。そこで、今回のアグロエコロジー研究会では、水田の”冬期湛水”技術に注目し、果たして生物多様性向上や営農条件改善に効果があるのかについて、その効果をまさに検証しようとしている研究者に参集いだだき、最新の報告をしていただく。また実際の農業現場からの視点も入れ、農生態学から総合的にみた本技術の可能性と問題点について総合的に議論する。なお、本集会は、日本農業・農村工学会の農村生態工学部会との共催という意味も含んでいる。
司会:日鷹一雅・嶺田拓也
コメンテータ予定:
1.冬水田んぼの先進地である地元東北から実践農家から
2. 農学だけではなく衛生医学の側面からの評価について
[T12-1] 冬期湛水水田は水田生物の多様性が高いのか?
[T12-2] 生態系保全に配慮した水田におけるトンボ幼虫の生息状況
[T12-3] 環境保全型水田における土着天敵を利用した害虫被害防除のための空間生態学的研究
[T12-4] 冬期湛水の取り組み実態とその課題