| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T15-4
トカゲの青い尾は、地味な胴体部との対比で目立つ色を呈することで、捕食者の注意と攻撃を自切と再生が可能な尾部に引きつけ、生存上重要な頭部と胴体部を防御する適応形質とされている。しかし、前提である捕食者に尾部の色が見えているということは確かめられていない。そこで、本研究では青い尾が捕食者の色覚に対応して進化してきた形質かどうか検証するために、トカゲの尾部の反射光特性と捕食者の色覚を比較した。
対象とした伊豆諸島と伊豆半島に生息するオカダトカゲは地域により3タイプの異なる捕食者(イタチ:哺乳類、シマヘビ:ヘビ類、アカコッコ:鳥類)をもつ。捕食者が異なるトカゲの尾部の反射光特性を分光器で測定し、捕食者の近縁種で明らかにされている錐体細胞の感度ピークと比較した。その結果、イタチおよびシマヘビを捕食者にもつトカゲの反射光のピークは、それぞれの捕食者の錐体細胞の感度ピークに対応することが明らかとなった。これは、捕食者ごとの色覚に対応した反射光特性を持つことで、より注意を引きつけて捕食回避効果を高めていることを示唆している。アカコッコを捕食者にもつトカゲの尾部の反射率は、イタチやシマヘビを捕食者にもつトカゲよりも低かったため、目立つ色で捕食者の攻撃を誘引するためではなく、隠蔽的なものであると考えられる。