| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T20-2

林から農へ:里山ランドスケープ機能の持続的な発揮

滝久智(森林総研),前藤薫(神戸大・農)

害虫制御サービスや送粉サービスの供給者として昆虫は農地生態系の中で重要な役割を果たしている。こうした機能を担う天敵昆虫や花粉媒介昆虫の多くの種や群集は、安定した餌や巣場所などの資源の確保が難しい大半の農地生態系では個体群の維持は難しく、生息地として農地に近接した半自然もしくは自然植生からなる生態系を必要とする。したがって、田畑、里山林、採草地、ため池など様々な生態系で構成される里山ランドスケープでは、林縁部を含めた里山林が昆虫の主な生息地生態系となりうるため、里山林の量(面積)と質の維持が、害虫制御機能や送粉機能の持続的な利用に貢献すると予測される。

本講演では、こうした予測を検証するために我々が行っている研究のいくつかを紹介する。里山林の量に関する検証では、茨城県常陸太田市の里山地域のソバ栽培地をモデル農地生態系として行った調査の結果から、里山林の面積と害虫制御機能や送粉機能との関係について考察する。また、里山林の質に関する検証では、茨城県北茨城市の伝統的な管理に近い森林施業が行われている地域にて行った調査の結果から、人工林化や伐採時期など里山林の管理条件の相違が与える害虫制御機能や送粉機能を担う昆虫群集への影響について考察する。


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