| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T20-3
わが国では、戦後60年の間に産業構造や生活スタイルが大きく変化した。それに伴い、人間の森林に対する要求も変化し、従来行われてきた木材資源としての利用から、近年は癒しの場、レクの場など文化的サービスに対する期待が高まりつつある。ここでは、実際に森林に対するニーズや利用がどのように変化し、その結果としてランドスケープがどのように変わったか阿武隈山地南部の冷温帯ブナ林(小川学術参考保護林)を含む地域の事例を紹介する。
地域住民に森林利用やランドスケープおよびその変化要因について聞き取り調査を行うとともに、地域史や森林計画に関する文献調査を行った。さらに、土地利用図と空中写真を用いて、過去約90年間のランドスケープを復元した。その結果、森林利用は経済の発達段階とともに大きく3つの時代、1)戦前から戦後の復興期までの用材、薪炭、放牧や採草、堆肥といった木材及び非木材の多様な利用が行われた時期、2)拡大造林が推進され、多様な森林利用が消失・減少し木材利用に比重が移った経済成長期、3)木材利用が減少し、観光・レク資源の利用へと、森林利用の相対的重要性がシフトしてきた時期、に区分され、利用の変化と連動して、新たな景観要素の出現や既存の景観要素の断片化などランドスケープも大きく変化したことが明らかになった。また、観光レク利用の集中地域を地理的に評価した結果、谷筋・山腹・尾根筋などの地形や土地利用によって利用形態に特徴がある傾向も明らかになった。