| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T22-1

はじめに−日本に生育する熱帯系植生−

村上 雄秀(IGES国際生態学センター)

東アジアにおいて気候帯と植生帯とは概ね整合する.しかし亜熱帯については暖温帯との関係で対応する森林タイプが明瞭でない(「将来に残された課題」奥富 1977).日本では一般に南西諸島が亜熱帯の北限とされる.ヤブツバキクラス域の気候帯としての位置づけを考えるため,日本に成立する熱帯系の植生について概観したい.主要な熱帯系の群落は以下の通り.

1. 種レベルで熱帯と共通(植生単位が共通):ハマゴウクラス(〜本州南部),イボタクサギ−シイノキカズラ群団(南西諸島)(2群集),オオハマボウ−アダンクラス(南西諸島),ミツバノコマツナギクラス(南西諸島),オヒルギ−オオバヒルギクラス(南西諸島),ハマアズキ−グンバイヒルガオ群集(南西諸島),ニッパヤシ群集(南西諸島),常緑シダ草原(コシダ・ウラジロ)(〜本州南部)

2. 属・科レベルで熱帯と共通:イヌビワ−アカメガシワオーダー(〜本州),リュウキュウガキ−クスノハガシワオーダー(南西諸島),ヤシ類群落(ビロウ・ヤエヤマヤシ)(〜九州).

多くの植生は南西諸島を北限とする。南西諸島では群集まで熱帯と共通の植生がヤブツバキクラス域の土地的植生として生育している.南西諸島の海岸植生は亜熱帯的ではなく熱帯的である.海岸植生が熱帯との共通種を減じ,「亜熱帯」らしくなるのは九州〜本州南部である(ハマボウ,ハマナツメ).種レベルで熱帯と共通する常緑シダ草原やアカメガシワなどの先駆林,ヤシ科(シュロ)を伴う森林はヤブツバキクラス域のほぼ北限まで分布する.照葉樹林の分布・組成の中心は台湾や福建・広東省であり,それは吉良(1949),鈴時(1952)の亜熱帯に相当する.本多(1912;Subtropische Waldzone:暖帯林),大場(1982)はヤブツバキクラス域を亜熱帯とした.亜熱帯の森林とは何を指すべきなのか、その植生の内容を考えたい.


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