| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T25-2

食物網のモジュールの動態:捕食・被食系から3種系へ

難波利幸(大阪府立大・理)

生物は,エネルギーと物質を利用することなく生存することはできないので,独立栄養生物である植物を含めて,食うことと食われることの帰結を理解することなくして生物群集を理解することはできない。したがって,2種間の捕食−被食関係,あるいは栄養関係は,競争や相利と並んで重要な生物間相互作用である。

食物網では,捕食−被食関係で決まるリンクによって,多くの種が結合されている。食物網に含まれる任意の2種は,たとえ直接のリンクで結ばれなくても,いくつかの他種を経由するリンクの系列を通じて結ばれることが多い。したがって,種間相互作用の結果を理解するには,直接効果の他に間接効果を考慮する必要がある。

生物間相互作用の研究においては,古くから,数理モデルを使った理論的研究が行われてきた。Lotka−Volterraの捕食と競争のモデルなど,2種系に関する結果はよく知られているが,わずか1種が増えただけの3種系でも,それを構成する2種系の性質からは予測できない複雑な挙動を示すことがある。また,間接効果は,介在する種の密度の変化が引き金となるだけではなく,介在する種の形質の変化が原因となることもある。この,形質が介する間接効果は,群集動態をさらに複雑なものにする。

このように,食物網や生物群集全体から見ると極めて単純ではあるが,2種の直接の相互作用からは予測できない挙動を示す3種または4種の部分系は,食物網や生物群集の動態を決める基本単位になっている可能性があり,その代表的なものは群集のモジュールとよばれる。ここでは,捕食−被食関係の他に競争関係も加えた,主に3種と4種からなる群集のモジュールについて,密度を介する間接効果の存在によって,どのような動態が現れるかをまとめて紹介し,モジュールと食物網や生物群集全体の安定性を結びつける可能性について考察する。


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