| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T30-1
関東地方における半自然草地は,明治時代初期に作製された迅速測図に関する小椋(1996)の研究などから,かつては大面積かつ広範囲に分布していたことが知られている。
演者らはこの迅速測図をインターネット上で閲覧し,現在の土地利用との比較が可能な歴史的農業環境閲覧システムを開発した。このシステムでは,迅速測図と,国土数値情報の100mメッシュ土地利用を切り替えて表示することにより,約120年間の関東地方の土地利用変化を見ることができる。
迅速測図の特徴として彩色されていることがあげられるが,ここで認められる半自然草地は主に二つに分けられる。一つは二色の混合色により彩色され,「灌」,「樸」,「荒」等が記載されている低木,灌木地であり,もう一つは青系で彩色されており,「草」,「茅」,「萱」等が記載されている草地である。
これらの半自然草地はそのほとんどが消失しているが,全てが同じ土地利用に変化したわけではない。立地や,地形,周辺の社会環境の違いなどにより,住宅地などの都市的土地利用,畑地などの農耕地,樹林地など,様々な土地利用へと変化している。
さらに,半自然草地から現在の土地利用に直接変化したとも限らない。茨城県南部の牛久市付近の場合,明治時代初期,1880年代に存在した草地は1900年代にはその大部分が樹林地や畑地に変化していた。この樹林地は1950年代には畑地へと変化し,さらに1980年代や2000年前後にはこれらの畑地や樹林地が住宅などの都市的土地利用に変化していた。
半自然草地の保全や管理,そして再生を考える場合,この様な土地利用の変遷を評価する必要があるだろう。