| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T30-2
かつて里地里山において広く分布していた半自然草地は、都市化や農業形態の変化に伴い、分布面積の減少、種組成の劣化、外来種の侵入などの影響で急激な衰退が懸念されている。そこで、本研究では、平野部に分布する二次草地の植生調査を実施し、多様性の高い半自然草地の分布状況ならびに成立・維持機構を解明することを目的とした。
筑波稲敷台地において現存するススキ草地を対象として2006〜2007年に植物社会学的調査ならびにコドラート調査を実施し、TWINSPANを用い群落タイプの分類を行った結果Gr.1〜Gr.5の5つのタイプに区分された。各群落タイプの成立要因を解明するため、各グループを従属変数とし、調査地の群落面積、相対光量子密度、立地区分、土地利用改変のあるなし、土壌pH、可給態リン酸量、全窒素量、全炭素量、土壌水分、斜面方位を独立変数としてLogistic回帰分析を実施した。Gr.1からGr.3は造成地や畑作放棄地との結びつきが強く、可給態リン酸量が高いことから土壌矯正や造成による土地改変の影響を受けていた。多様性の高い開放型の半自然草地であるGr.4は斜面刈取り草地、台地上採草地との結びつきが強く、土壌pHが酸性土壌(対象地の自然土壌に近い値)あった。Gr.5は常緑広葉樹林に隣接する斜面刈り取り草地と結びつきが強く、土壌pHが強酸性を示していた。以上から、Gr.4、Gr.5ともに、長期間、大規模な土地改変が行われていない安定した立地に生育していることが示唆された。半自然草地における在来種数と多様性と環境要因の関係においても種多様性が高い半自然草地は土地改変がなく、土壌が強酸性であることが示された。半自然草地の多様性はその場の歴史性を反映しており、農耕地周辺に成立する半自然草地は現在の農業形態の中で維持されている貴重で遺存的な植物群落であることが明らかになった。