| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) D1-02

捕食被食関係の進化によって構成される食物網構造

*高橋 大輔 (京大・生態研セ), Rupert Mazzucco (IIASA), Åke Brännström (Umeå University), Ulf Dieckmann (IIASA)

捕食被食関係は個体の生死に直接的に影響するため、生態系内でも大きな影響力を持った関係であると考えられる。そのため、捕食被食関係やこの関係によって作られる食物網に関して、これまで様々な研究がなされてきた。本研究では、それぞれの個体はforaging形質とvulnerability形質の2つの形質を持つとした。捕食被食関係に加えて干渉型競争がある状況を仮定し、捕食被食関係の強度は捕食者のforaging形質と被食者のvulnerability形質との類似性、干渉型競争の強度はそれぞれのforaging形質の類似性から定義されるとした。これらの形質が進化するときにどのような条件で多様な種を擁する系が生じるかを、個体ベースモデルによるシミュレーションを用いて解析した。これまでのモデル研究の多くでは、対応する形質の有無によって種間の摂食強度が決まり、突然変異は形質の獲得および喪失としてのみ発生するとして中間的な形質を持つ個体の存在を無視していた。しかし、本研究では微小な突然変異による形質値の変化を考えることで、漸進的な進化および種分化プロセスについて考えることができた。また、個体間の相互作用をモデルしているため、人口学的確率性を含めることができた。解析から、競争に比べて捕食被食関係が十分に強いときに種数が増加し、栄養段階が分化した複雑なネットワークが形成されること、そしてそれにはまたforaging形質が変異する速度が十分大きい必要があることがわかった。さらに、ニッチ次元が大きいときは種数が増加する傾向があった。


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