| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S02-1

日本の生物多様性総合評価報告書案について

中静透(東北大学)

生物多様性総合評価は、日本の生物多様性の状況を一般に広く認識してもらうとともに、環境行政等における政策決定に判断材料を提供するため、生物多様性の要因や状態に関わる既存の科学的・客観的な情報等を総合的に分析・評価することを目的とする。環境省の設置した「生物多様性総合評価検討委員会」は,平成20年度から検討を開始し、昨年度と今年度の2ヵ年をかけて「生物多様性総合評価報告書」を取りまとめつつある。

昨年度は、日本の生態系を大きく6つ(森林生態系、農地生態系、都市生態系、陸水生態系、沿岸・海洋生態系、島嶼生態系)に分け、それぞれの生態系における指標を検討した。また、これらの各生態系を横断して、生物多様性国家戦略に示された3つの危機,すなわち1)開発や乱獲の影響、2)里地里山などの利用減退の影響,3)外来種などの持ち込みの影響、及び4)地球温暖化の危機の観点から,危機をもたらす要因に関する指標を検討した。

今年度は、昨年度に開発した30の指標を再検討した上で、報告書(案)を作成した。過去約50年間について、生態系を横断する指標によって生物多様性の損失の要因を、また、それぞれの生態系の指標によって生態系ごとの生物多様性の損失の状態を評価し、これらを総合して日本の生物多様性の損失を評価した。同時に、多くの専門家に案文を送付して意見を求めた。

報告書(案)は、日本の過去における生物多様性の損失に関する評価を中心とし、生態系サービスへの影響、2010年目標の達成状況、将来における損失への対策のプライオリティ、評価に関する技術的課題についても記述を試みた。

「生物多様性総合評価報告書」は本年5月に公表の予定であり,このシンポジウムでその内容を紹介してご意見をうかがい、熟度を高めたい。


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