| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T20-5

水生・湿生RDB植物を指標にした日本の水辺類型

鎌田磨人・熱田尚子・田代優秋(徳島大学)

水田やそれを取りまく用水路などは,湿地に生息・生育してきた生物の代替ハビタットとして重要な役割を果たしてきたとされる.しかし,近年はそうした水田も宅地化や,耕地改善事業によって,代替湿地としての機能が失われてきている.そのため,水田周辺の水理環境の保全や修復・再生が,課題となっている.

水田周辺の水理環境は多様であり,修復・再生を計画・実施するにあたっては,水辺環境の質を区分しながら,それぞれにあった手法を検討していく必要がある.本研究では,それを広域的視点で行うために,環境省RDBに掲載されている湿生・水生維管束植物を指標として,日本の水辺環境を類型化した.

1)2次メッシュ(10km x 10km)で在・不在が公開されているRDB維管束植物408種のうち,淡水域の湿生・水生植物159種を抽出した.その中から,日本全域の20メッシュ以上で分布が確認されている64種を解析対象種とした.

2)これら種の在・不在表からSorensenの類似係数を求めた上でクラスター分析を行い,種の出現パターンをグループ化した.グループ化された個々の種群を解析単位として,3種群について以下のように解析を進めた.

3)目的変数を2次メッシュ内の種群の在・不在に,説明変数を標高,傾斜角度,SPI,TWI,WI,年降水量,最深積雪量の7つの環境変量の2次メッシュ内平均値とし,ロジスティック回帰分析を行った.それぞれの種群で選択された環境要因から,それらの潜在的生育地図を日本全域で作製した.

本研究では,誰もが利用可能な粗い解像度の資料を用いた解析を行った.本報告では,そのような資料であっても,日本全域等の広域に対して行った場合には,種群の出現を決定づける環境要因が推定可能であること,そして,地図化することでいわゆるエコリージョン区分が可能となることを示す.


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