| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-135

根呼吸速度の日変化-光合成パターンとの関係-

*牧田直樹, 小杉緑子(京大・農), 鎌倉真依(奈良女大・共生センター)

根呼吸速度は、植物環境に関連するさまざまな環境要因によって規定されている。特に、温度は、生理活動に影響を強く与えることが知られており、土壌温度の増加は、酵素触媒反応の促進やATPの増加を生じさせ、根呼吸速度を指数曲線的に高める。しかしながら、最近の研究では、土壌温度と根呼吸の関係のみでは、根呼吸のばらつきをうまく説明できないことが明らかとなり、この一つの理由として、地上部からの炭素供給といった生物的な要因が関連していると考えられている。そこで本研究では、ミズナラとブナの実生苗の土壌呼吸・根呼吸速度(1時間おきに24時間)と光合成速度(1時間おきに10時間:日中)を連続測定し、根呼吸がどのような要因によって制御されているかを明らかにすることを目的とした。さらに、それぞれの樹種で、光有り区と光遮断区をつくり、光の有無による根呼吸速度の日変化を測定し、光合成による炭素供給機能が地下部に与える影響を考察した。

調査の結果、根呼吸速度は、土壌温度が上昇するにつれて高くなった。しかしながら、最高温度時と呼吸速度の最高値は、必ずしも一致しなかった。朝方と夕方の同じ温度での根呼吸速度を比較すると、夕方のほうが朝方より根呼吸速度がおよそ1.5倍高いことが明らかとなり、温度と呼吸関係は、一日の中でヒステリシス曲線を描くことが分かった。また光有り区と光遮断区を比較すると、根呼吸速度は、光有り区のほうが有意に高かった。これらの結果から、根呼吸速度は、温度に依存するだけでなく、地上部からの炭素供給やそのタイムラグによって影響されていると推測される。本発表では、これらの結果と光合成速度の結果をもとに、根呼吸速度が光合成速度の日変化パターンとどのようにリンクしているのか、より詳細に考察する。


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