| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-136

富士山の樹木の葉におけるN・P量の標高にともなう変化

*後藤友紀,山村靖夫(茨城大・理),中野隆志,安田泰輔(山梨県・環境科学研)

土壌中の栄養塩は、植物の生育を制限する要因のひとつであり、特にNとPは重要な制限要因となる。比較的新しい火山である富士山は貧栄養土壌のため、植物はNやPの制限を受けやすいと考えられる。亜高山帯に生息する草本の研究では高標高でP制限が強くなることが示唆された。そこで、富士山の樹木の生育においても標高に伴いN制限からP制限へ変化することを予想し、落葉時のNおよびPの回収率と生葉内のN:P比を指標として検証した。落葉前の生葉からの栄養塩の回収は、貧栄養立地での栄養塩経済に重要な影響を持つため、制限の指標として落葉時回収率が用いられてきた。また、植物体のN:P比はN・Pのどちらがより制限的かを示す指標として、湿地草原群落では、値が14より小さいとN制限、16よりも大きいとP制限を示すことがわかっている。同じスコリア基質の標高の異なる2地点( 標高 1878 m 、2319 m )において、主要な樹木種である広葉樹のダケカンバ、ナナカマド、ミネヤナギ、針葉樹のカラマツ、コメツガ、シラビソの6種の生葉と落葉直後の枯死葉におけるNとPの濃度と土壌栄養塩濃度を測定した。

利用可能な土壌栄養塩濃度はN、Pともに標高と伴に減少した。N回収率は、広葉樹では標高に伴い減少し、針葉樹では増加した。一方、P回収率は、ほとんどの樹種が標高に伴い増加した。以上の結果は、標高に伴いP制限が強くなることを示唆し、N:P比の結果は予想とは一致せず、標高に伴う変化は種によって様々であった。N・P制限の指標としてN:P比の樹木への適用については検討が必要である。


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