| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-139

冷温帯落葉広葉樹林での林床ササ群落の有無による生態系純生産量(NEP)や土壌特性の比較

*飯村康夫(岐阜大流圏セ),八代裕一郎(岐阜大流圏セ),大塚俊之(岐阜大流圏セ)

岐阜大学流域圏科学研究センター高山試験地の冷温帯落葉広葉樹二次林(高山サイト)では、微気象学的手法によるNEPの長期モニタリングが行われており、2.37±0.92 t C ha-1 yr-1の吸収となっている(1994-2002, Saigusa et al. 2005)。また、長期的観測から樹木NPPと微気象学的なNEPは相関が高く、樹木生産の年変動が炭素収支の変動に寄与していることが確かめられた(Ohtsuka et al. 2007)。しかし、絶対量としては、両者には大きな差異があり、非生物的プールへの一定量の蓄積を示唆する結果となった(Ohtsuka et al. 2008)。高山サイトの林床はほぼ100%ササに覆われており、そのバイオマスはほぼ平衡状態と考えてよい。このことは、ササの葉・竿や地下茎などの毎年の生産物は生物的バイオマスプールに蓄積されるのではなく、非生物的プールへ蓄積されることを意味している。このように林床ササ群落はミッシング・シンクとしての非生物的プール、特にSOMプールへの炭素蓄積に寄与していると考えられるが、その詳細を定量的に評価した例はない。そこで本研究では、このような仮説を検証する第一歩として、林床ササ群落の有無以外は高山サイトとほぼ同じである隣接地森林生態系に20m×20m試験区を新たに設け、生態学的な野外調査から両者のNEPを明らかにした。また、深度80cmまでのSOM濃度(単位重量あたりのC%)および絶対量(t C ha-1 yr-1)を層位別に算出し、両者のSOMプールについて定量的に解析し比較した。さらに、土壌断面形態や一般理化学性といった土壌特性の結果もあわせて、林床ササ群落がSOMプール蓄積に及ぼす影響について考察した。


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