| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-229

動物専用周波数帯を利用したニホンザルのリアルタイムモニタリングシステム

*増間拓也, 山本麻希(長岡技大・生物), 酒井龍市, 藤井芳輔, 臼井秀行((株)イートラスト), 竹田謙一(信州大・農), 羽山伸一(日獣大・獣医)

ニホンザル(Macaca fuscata)から農作物を守るためには、群れの行動を常にモニタリングし、集落に入る前に予防的な追い払いを行う必要がある。サルの群れを追い続ける労働力を減じるため、複数の固定アンテナから受信した電波強度からサルの位置を3点法で定位し、得られた位置データをWeb上にリアルタイムで表示するシステムを開発し、その精度の検証を行った。

調査は、新潟県中魚沼郡津南町と長野県下水内郡栄村の境界域を流れる志久見川沿いにある河岸段丘に位置する集落、畑作地で行った。本システムの精度を検証する方法として、調査地に5カ所の固定アンテナを設置し、各アンテナから半径500 m以内の範囲に58箇所の調査地点を設置した。国内で認可されている動物専用周波数帯を利用したVHF電波発信機(サーキットデザイン社 LT-01)を0.5 mの高さで約2分間保持し、その位置をGPS(Trimble社 GPS Pathfinder SB)と本システムで同時に定位し、2点の距離を計測した。

その結果、5カ所の固定アンテナの内側の地点(254.4±293.5 m)にくらべ、外側の地点(528.6±340.4 m)では、本システムとGPSによって定位された位置の差が大きくなった。アンテナの内側では、最寄りの2点の固定アンテナの直線と地点のなす角度が10º以下の範囲やアンテナと地点の間に遮蔽物や土地の高低差がある場合は定位精度が低かった。一方、アンテナの外側であっても、地点とアンテナ間に遮蔽物がなく、最寄りの2点の固定アンテナの直線と地点のなす角度が30º以上の地点では定位精度が高かった。


日本生態学会