| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


シンポジウム S10-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

特別講演 『沈黙の春』の50年―――未来へのバトン

原強(レイチェル・カーソン日本協会関西フォーラム代表)

『沈黙の春』が出版されて50年になる。多くの人に読み継がれ、いまや「環境問題の古典」とされるようになった。この50年をふりかえるとき、10年を一区切りと考えても、読者は5世代の層が積み重ねられてきたことになるわけで、それだけに、その読み方も、評価の仕方も、さまざまなものがある。それであってこそ「古典」といえるのだろう。私自身も、読むとき、語るときの状況によって、焦点のあて方が違っていたように思う。たとえば、最初に『沈黙の春』を手にしたころは食の安全と農薬問題に焦点をあてていたと思うが、その後、いわゆる環境問題に関わるようになってからはそれなりの読み方をしてきたと思う。また、昨年の「3・11」、すなわち東日本大震災と福島原発事故に直面してからは、「べつの道」という言葉を軸に語るのがふさわしいと思っている。昨年秋、『「沈黙の春」の50年』を出版するにあたり「未来へのバトン」という副題を添えさせてもらった。この言葉はとても好きな言葉なので大事に使ってきたつもりだが、今回、この言葉を添えさせてもらったのは、私がとくにいま強く思っていることが、レイチェル・カーソンや『沈黙の春』についていかに未来の世代に語り継いでいくことができるかということだからである。すなわち、私が握っているバトンをいかにして未来の世代に手渡していけるのかという思いを表現したかったからなのである。いずれにしても、禍いと破滅への道ではなく、「べつの道」を選び、平和な、豊かな地球の未来を切り拓くために、いま私たちに何ができるかを一生懸命考え、行動していきたいと思っている。


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