| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-17 (Oral presentation)

積分球を用いた細い葉および針葉の分光反射率・透過率の測定方法

*野田響(筑波大・生命環境), 本岡毅(JAXA), 村上和隆(筑波大・生命環境), 奈佐原顕郎(筑波大・生命環境), 村岡裕由(岐阜大・流域圏セ)

植物の葉の分光特性(分光反射・透過率)は、葉の生理生態学的機能を決定する色素・水分含量などの生化学的形質や解剖学的構造を反映したパラメータである。また同時に,群落内の光環境の推定やリモートセンシングによる群落構造推定においても欠かせない。従って,個葉の分光特性を正確に測定することは,植物生理生態学および植物群落のリモートセンシングにおいて重要である。正確な個葉の分光特性測定には積分球による方法が適している。ところが,積分球のサンプルポートよりも十分に大きい面積の葉であれば通常の測定が可能だが,細い葉(イネ科草本の葉や針葉)の場合,葉のふちから入射光が漏れてしまい,測定精度が損なわれてしまう。このような場合,入射光が当たる面に対して,光が漏れる「隙間」の割合を光強度で重み付けして推定することができれば,葉の分光特性は推定できる。これまで,様々な方法で隙間面積の推定が試みられてきたが,それらの方法は,緑葉の測定のみで有効な方法であるか,光の強度での重み付けがなされていなかった。そこで,本研究では,若葉や緑葉,黄葉を含むほとんどの葉が400 nm付近において非常に低い透過率を示すことを利用し,葉と濾紙を組み合わせて積分球で測定することで隙間の割合を推定し,細い葉の分光特性を測定する方法を開発した。アオキの葉について(1)元の形状の葉と(2)細く切った葉片について,それぞれ通常の方法と新たに開発した方法で測定したところ,(2)により得られた値は(1)の値と非常によく一致しており、この測定方法が妥当であることが示された。


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