| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) G1-10 (Oral presentation)

アノールトカゲにおける温度適応形質の遺伝基盤の解明

*赤司寛志,カディス ディアス アントニオ,牧野能士,河田雅圭(東北大・生命)

地球温暖化の影響により、世界中のトカゲの集団が大量に消失することが危惧されており、温度適応は生物多様性維持に欠かせないと考えられる。しかし、爬虫類の形態や行動における温度適応機構の知見は蓄積しつつあるものの、温度適応に関与する生理機能については研究が浅く、温度適応機構の遺伝的基盤は未だ解明されていない。さらに、爬虫類は日光浴など行動的に温度ストレスを緩和させることから、代謝や至適体温の分化など、生理機能の温度適応は生じにくいという説があり、温度適応の遺伝的基盤の研究は困難であると考えられる。

キューバに生息する系統的に近縁なアノールトカゲ3種(Anolis allogus, A. homolechis, A. sagrei)は、形態や行動が類似しているにもかかわらず、微環境を違えることで同所的な生息を可能にしている。この3種は、微環境間で生じた異なる温度環境下で種特有の体温を維持していることから、温度適応に関わる生理機能を分化させている可能性が高く、温度適応機構の遺伝的基盤を解明する上で有用であると考えられる。そこで、本研究ではこれら3種をモデルとし、トランスクリプトーム解析により、異なる温度条件下で発現量が変化し、さらにその変化の仕方が種間で異なる遺伝子を検出することにより、異なる温度環境への適応に関わる遺伝子を特定することを目的とした。まず、3種を26ºCまたは33ºCで5日間維持した後、各個体の脳、肝臓、皮膚からmRNAを抽出、精製した。そして、各組織における遺伝子発現を網羅的に解析するために次世代シークエンサー(Illumina HiSeq 2000)を用いてRNA-seqを行った。解析結果から熱ショックタンパク、抗酸化物質、エネルギー代謝などに関する候補遺伝子が検出された。発表では、これらの候補遺伝子の機能をふまえて結果を報告する。


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