| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-19 (Oral presentation)

地中生息性ミミズが土壌炭素動態に及ぼす影響

*金田哲(農環研),米村正一郎(農環研),児玉直美(農環研),和穎朗太(農環研),大久保慎二(自然農法センター)

地中生息性ミミズであるサクラミミズが土壌呼吸速度に及ぼす影響を室内実験にて評価した。その結果、対照区(ミミズ未投入)と比較しミミズが土中にいると土壌呼吸速度が増加し、ミミズを土中から除去すると一時的にミミズの効果が無くなり、その後土壌呼吸速度が低下することを明らかにした。

ミミズは、有機物を摂食し分解することで土壌炭素の無機化を促進することが明らかになっている。その一方で、ミミズは団粒を形成し団粒内の有機物分解を遅延させることで土壌炭素を蓄積させる事が報告されている。つまりミミズは有機物分解を促進させる効果と遅延させる効果の2つを有している。しかし未だ、ミミズが土壌炭素動態に及ぼす影響、およびそのメカニズムは十分には明らかになっていない。そこで、広く日本に分布するサクラミミズを地中生息性ミミズのモデル生物とし、ミミズの分解促進効果と遅延効果を、培養期間中にミミズを除去することで評価した。処理区は、実験開始後20日間のみミミズ1個体を土で培養しその後除去する区と、ミミズを投入しない土のみの区の2つを設けた。土は、1mm以下の沖積土20g(乾土)を培養瓶に詰め、最大容水量の60%に調整した。実験は15℃で行った。定期的に土壌呼吸を測定することでミミズの効果を評価した。ミミズ投入時を実験開始日とし、ミミズが土中にいた実験開始20日後までは、ミミズ処理により土壌呼吸速度が増加した。ミミズ除去後ミミズ処理による効果が一時的に無くなったが、実験開始111日後頃からミミズ処理により土壌呼吸速度が定常的に低下した。実験開始後20日まではミミズの摂食活動等により土壌呼吸速度が増加し、111日以降はミミズによる団粒形成の効果が強くなり土壌呼吸速度が低下したと考えられた。


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