| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-21 (Oral presentation)

陸域最大の炭素・窒素プールの安定化機構:Part1 土壌団粒の階層構造から読み解く

*浅野眞希,和頴朗太(農環研)

土壌有機物(SOM)は陸上生態系で最も大きな炭素・窒素プールであり、生元素の供給源として生態学的に重要である。しかし、根や分解者の生育に必須な土壌孔隙を形成する団粒構造とSOMの関係については不明な点が多く、生元素の動態や地下部の生物多様性を理解する妨げになっている。団粒構造とSOMの相互関係について「粒径の大きな土壌団粒は細根や菌糸により維持され、その内部に存在する微細な団粒は、粘土鉱物や腐植物質などの集合体から形成される」という団粒階層構造の理論が提案され、結晶性粘土鉱物を主体とする土壌を対象に様々な研究が行われてきた。本研究では、非晶質鉱物およびSOM含量が高い火山灰土壌に対し団粒階層構造理論の検証を行い、SOM安定化機構との関係性を評価した。

茨城県のアロフェン質黒ボク土を供試し、粒径サイズの違いによる、有機・無機集合体の物理分画を行った。各画分のTOC、TN含量、δ13C、δ15N、⊿14C値、固体13C- NMR、比表面積、選択溶解法によるFe,Al,Si,可溶性炭素・窒素の測定、SEM観察を行った。

粒径サイズ分画の結果、2μm以下の画分にTOC、TNおよび、非晶質鉱物の約80%が分布していた。また、粒径が小さい画分ほど、C/N比が低下し、15Nが富化するとともに、芳香族炭素含量が減少し、⊿14C値が上昇した。以上の結果および団粒の分散強度試験から得られた結果から、①2 μm以下の土壌粒子が接着剤として働き、強固なマクロ団粒が形成される、②微細な土壌粒子の主体は、微生物由来の窒素に富む有機物と非晶質鉱物・Al, Feイオンが強固に結合した有機・無機集合体である、③この有機・無機相互作用が火山灰土壌の高い炭素蓄積と多孔質性を可能にしていることが示唆された。


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