| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-172 (Poster presentation)

イラクサ(<i>Urtica thunbergiana</i>)の刺毛形質の表現型可塑性:ニホンジカ(<i>Cervus nippon</i>)の採食圧の影響 Phenotypic plasticity of stinging hairs of the stinging nettle, <i>Urtica thunbergiana</i>: Effects of browsing by Sika deer.

*加藤禎孝<sup>a</sup>(a:奈教大自然環境教育センター), 石田清 <sup>b</sup>(b:弘前大農学・生命科学), 菊地淳一<sup>c</sup>(c:奈教大 教育), 鳥居春己(<sup>a</sup>(a:奈教大自然環境教育センター)

多年生草本のイラクサの刺毛は密度や長さなどが環境条件によって可塑的に変化する。この刺毛形質に対するニホンジカの採食圧の影響を明らかにするため、2012年6月に2つの調査区を奈良公園内の採食圧の高い場所(高採食圧区)と低い場所(低採食圧区;フェンスで囲まれた竹林)に設定し、人為的に茎頂切除実験を行った。切除前(6月)の葉と切除後(8月)の同じ葉位の葉の刺毛数、刺毛長、葉面積を測定し、刺毛密度を算出した。

切除前、両調査区間の葉面積には有意差が無かったが、高採食圧区の方が刺毛数も多く、刺毛長も長く、刺毛密度も高い。葉面積は、高採食圧区では変化なく、低採食圧区では切除後は有意に小さい。切除前後で、刺毛密度には有意な差は両調査区とも無かった。刺毛数は共に切除後の方が有意に少ない。刺毛長は、高採食圧区では裏面でのみ有意に長かったが、低採食圧区では両面とも切除後の方が有意に長い。低採食圧区の方が切除に対して強く反応する傾向が見られた。

高採食圧下の実生個体を低採食圧下で育てると刺毛数等が減少する(加藤ら2012)ことも考慮すると、イラクサはシカの採食圧の変化に応じて防御反応を効率良く行っていると考えられる。


日本生態学会