| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-181 (Poster presentation)

海洋顕花植物の生態系機能に及ぼす小型無脊椎動物群集の影響

*堀正和(水研センター・瀬戸内海区),仲岡雅裕(北大・FSC),Matthew A. Whalen (Univeristy of California, Davis), Pamela L. Reynolds (VIMS), j. Emmett Duffy (VIMS)

沿岸海洋域は陸上生態系と同様に基盤種が卓越し,その基盤種を中心とした生物群集が形成される生態系である。なかでも海洋顕花植物のアマモを基盤種とする海草藻場は,高い生態系機能と生物多様性を有することが知られており,その原動力はアマモ類の高い一次生産力に依存している。その一方,海草藻場の多種多様な動物群集はアマモの一次生産に影響を及ぼし,生態系機能に作用することが示唆されている。その作用機構をはじめ,基盤種-動物間相互作用を検証することは,沿岸域の生物多様性-生態系機能関係を解明するうえで必須とされている。

Zostera Experimental Network (ZEN) は海草藻場の生態系機能や生物多様性の構造を研究対象としたグローバルな研究ネットワークであり,全世界で統一した手法の操作実験を同時に行うことで生態系の状況依存性や時空間変動を包括した成果を得る活動をしている。本研究ではZENの取り組みの一つとして,栄養塩と植食者多様性の相互作用がアマモ場の生態系機能に及ぼす影響について実証を行った。ZENで開発された栄養塩及び植食者密度・多様性の操作手法を用い,瀬戸内海のZENサイトで操作実験を行った。その結果,操作により植食者の多様性は有意に減少し,さらにその減少の勾配に沿ってアマモの一次生産が有意に減少した。また,栄養塩操作によってアマモの一次生産は減少したものの,植食圧との相互作用は確認されなかった。これらの結果は,瀬戸内海では動物群集の減少および栄養塩増大によって海草藻場が衰退する可能性を示唆している。


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