| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-325 (Poster presentation)
西カリマンタンにあるMandor自然保護区とNiut山自然保護区境界付近のSerimbu郡Berui山地域において、それぞれ1987年と1993年に植生を調査していたが、2012年に再調査して森林の劣化状況を明らかにした。Mandorは面積3080haの小さな保護区であるが、かつてはケランガス土壌の湿地にテンカワンと呼ばれるShorea stenopteraなどが生育する天然林が見られた。この地域では砂金が取れるので、1980年代後半から砂金採掘が進み、大部分の森林が掘り返されて砂浜のような状態に変わっていた。100haほどの面積に森林が残っていたが、大径木はほとんどが択伐されていた。ただ、残存林分の種多様性はまだ高く、小面積でも今後の遺伝子資源として保護していくことが重要と判断された。
Niut自然保護区は2012年には面積91,700haとされているが、1990年代には隣接する伐採区や昔からある村との関係で境界線がいくつもあり、保護区といってもほとんど名目だけの状況にあった。それらの境界線付近のBerui山は、村の水源林として数百haが保護されていた。1haに直径4.8cm以上の樹木が300種以上、フタバガキ科だけでも20種以上存在し、カリマンタンのフタバガキ林の中でも多様性が高い森林があった。2012年には大部分の森林が焼畑跡地に変わっていた。水を取得している小沢に沿った数十haだけに、大径木を抜き切りされた残存林分を見ることができた。そこでは、かつての森林なみの多様性を維持していた。
西カリマンタンの大部分の地域で自然林が失われた現状においては、上記2ヶ所のように従来は保護区ともならなかった小面積の残存林分でも保護することが重要であろう。