| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-327 (Poster presentation)
フジバカマ(Eupatorium japonicum)は古来より「秋の七草」の一つとして、日本人に親しまれてきた多年草であるが、生育地である河川土手の破壊とコンクリート化により、近年では国・準絶滅危惧種、群馬県・絶滅危惧II類に指定されるまでに減少している。本研究では、本種の保護増殖のため、発芽特性・生長特性の解明を行った。群馬県内で採取した種子を用いた発芽実験により、1ヶ月間以上4℃で冷湿処理すると発芽が促進される可能性があること、発芽の最適温度は10/6℃〜25/13℃(昼╱夜)と幅広く45%程度発芽すること、小さな個体群で生産された種子は発芽率が低いこと、が明らかになった。挿し穂実験では、60%以上が活着したが、根元に近い部分の方が活着率は高かった。実生および栽培2年目の株を相対光量子密度3%、9%、13%、100%の被陰区で栽培したところ、いずれも13%以下の区では相対生長速度が著しく低下した。フジバカマの自生地は土手の上部で日当たりが非常に良く、重量土壌含水率は24%〜34%程度とさほど高くなく、土壌水中の三態合計窒素濃度は47〜72 mg L-1と比較的高かった。フジバカマの保護増殖のためには、実生を育てて遺伝的多様性を高める必要があり、また常に日当たりが良く、土壌窒素濃度の高い環境を維持することが不可欠であるといえる。